【更年期のめまい】ふわふわ?ぐるぐる?症状別の原因と今すぐできる対処法 

更年期のめまいになる女性

更年期にふと「めまい」に悩まされているなら、あなたは一人ではありません。本記事では「ふわふわする」「ぐるぐる回る」など症状別に更年期特有のめまいの原因を解説し、今すぐ実践できる対処法をご紹介します。女性ホルモンの変化がもたらすめまいのメカニズムから、受診すべきタイミング、自宅でできる改善エクササイズまで徹底解説。更年期障害の一症状としてのめまいと他の疾患との見分け方も学べるので、不安を解消しながら日常生活の質を高める具体的な方法が分かります。この知識があれば、めまいに振り回される日々から解放されるでしょう。

1. 更年期にめまいが起こる仕組みとは

更年期のめまいは、多くの女性が経験する症状のひとつです。なぜ更年期になるとめまいが起こりやすくなるのでしょうか。ここでは、そのメカニズムについて詳しく解説します。

1.1 更年期とホルモンバランスの変化

更年期とは、一般的に45〜55歳頃に訪れる女性の体の大きな転換期です。この時期には、卵巣機能が徐々に低下し、エストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンの分泌量が減少・変動します。

女性ホルモンの変動は一定ではなく、日によって大きく上下することがめまいの原因となります。特にエストロゲンの急激な減少は、自律神経系に影響を与え、体のさまざまな調節機能を乱してしまいます

年齢 状態 ホルモン変化
45歳前後〜 更年期初期 女性ホルモン分泌の不安定化
50歳前後 閉経前後 エストロゲン急減
55歳前後〜 更年期後期 低エストロゲン状態の定着

日本女性の平均閉経年齢は50.5歳とされていますが、個人差が大きく、40代前半から更年期症状が現れる方もいます。日本更年期医学会の研究によると、更年期症状の出現時期や強さには個人差があることが報告されています。

1.2 女性ホルモンがめまいに与える影響

女性ホルモン、特にエストロゲンは単なる生殖機能だけでなく、全身の様々な機能に関わっています。めまいとの関係では以下の点が重要です:

  • 血管の調節機能への影響
  • 内耳の機能維持
  • 自律神経系の安定化
  • 脳内神経伝達物質のバランス調整

エストロゲンには血管を拡張させる作用があり、その減少により血管が収縮しやすくなります。これにより脳や内耳への血流が不安定になり、めまいを引き起こす一因となります。

また、エストロゲンは内耳の機能維持にも関与しており、その減少により平衡感覚に影響が出ることが国際的な研究で示されています。

1.3 めまいの発生メカニズム

更年期のめまいは、主に以下のメカニズムで発生します:

  1. 自律神経の乱れ:女性ホルモンの減少により交感神経と副交感神経のバランスが崩れます
  2. 血流の変化:血管収縮による脳や内耳への血流低下
  3. 内耳機能への影響:平衡感覚を担う内耳の機能変化
  4. 血圧の不安定化:急な血圧変動によるめまい

これらの要因が複合的に作用し、更年期特有のめまいを引き起こします。特徴的なのは、ホルモンの変動に伴い症状の強さが日によって変化することです。朝は調子が良くても、午後になると急にめまいが起こるというパターンも珍しくありません。

また、めまいだけでなく、ほてりやのぼせ、発汗、動悸などの更年期特有の症状と併せて現れることが多いのも特徴です。これらの症状が同時に起こる場合は、更年期によるめまいの可能性が高いと考えられます。

内耳には三半規管という平衡感覚を司る器官があり、これが正常に機能することで私たちは体の傾きや動きを感知できます。更年期のホルモン変化はこの三半規管やその周辺組織にも影響を与え、平衡感覚の乱れを引き起こすことが国内の耳鼻科学研究で指摘されています。

このように、更年期のめまいは単なる一時的な症状ではなく、体内の大きな変化に伴う生理的な反応であり、ホルモンバランスの変化が引き金となって複雑なメカニズムで発生しています。

2. 更年期のめまいの種類と特徴

更年期のめまいの悩む女性

更年期のめまいは様々な種類があり、その特徴を理解することで適切な対処法を見つけることができます。めまいのタイプによって原因や対処法が異なるため、ご自身のめまいがどのタイプに当てはまるかを確認してみましょう。

2.1 ふわふわ感(浮動性めまい)の症状

浮動性めまいは、更年期の女性に最も多く見られるめまいのタイプです。これは船に乗っているような、あるいは地面が不安定になったようなふわふわとした感覚が特徴です。

このタイプのめまいは、主に更年期のホルモンバランスの変化による自律神経の乱れが原因となることが多く、特に以下のような特徴があります:

  • 長時間続くことが多い
  • 朝起きた時や体位変換時に悪化しやすい
  • 疲労やストレスで症状が強くなる
  • 集中力の低下や倦怠感を伴うことがある

日本耳鼻咽喉科学会の研究によると、浮動性めまいは更年期症状全体の約30%の女性に見られるとされています。

2.2 ぐるぐる感(回転性めまい)の特徴

回転性めまいは、自分自身や周囲の景色がぐるぐると回っている感覚が特徴的です。このタイプのめまいは、内耳の平衡感覚を司る器官の一時的な機能異常によって生じることが多いですが、更年期の女性ホルモンの変動も影響します。

回転性めまいの主な特徴は以下の通りです:

  • 数分から数時間続くことが多い
  • 吐き気や嘔吐を伴うことがある
  • 横になっていても症状が続くことがある
  • 特定の頭の位置で誘発されることもある
  • 冷や汗や顔面蒼白などの自律神経症状を伴うことがある

回転性めまいは、通常の更年期症状としても現れますが、メニエール病や良性発作性頭位めまい症などの内耳疾患との区別が必要なケースもあります。

2.3 立ちくらみ型めまいについて

立ちくらみ型めまいは、急に立ち上がった時や姿勢を変えた時に発生する一時的なめまいです。更年期になると血管の収縮・拡張をコントロールする自律神経の働きが鈍くなるため、起立性低血圧が起こりやすくなります。

立ちくらみ型めまいの特徴は以下の通りです:

  • 数秒から数分程度で収まることが多い
  • 視界が暗くなることがある
  • 起床時や長時間座っていた後に起こりやすい
  • 脱水状態や暑さで悪化しやすい
  • 食後30分〜1時間程度に起こりやすい(食後低血圧)

米国国立衛生研究所の報告によると、更年期の女性の約25%が起立性低血圧に関連ためらみを経験するとされています。

めまいのタイプ 主な症状 持続時間 関連症状
浮動性めまい(ふわふわ感) 地面が不安定、フワフワする感覚 数時間〜数日 疲労感、集中力低下
回転性めまい(ぐるぐる感) 周囲や自分が回転している感覚 数分〜数時間 吐き気、嘔吐、冷や汗
立ちくらみ型めまい 視界が暗くなる、フラつく感覚 数秒〜数分 ふらつき、転倒リスク

2.4 更年期特有のめまいの出現パターン

更年期のめまいには、特有の出現パターンが見られます。これらのパターンを知ることで、症状の予測や対処がしやすくなります。

ホルモン変動との関連性が強く、以下のようなパターンが特徴的です:

  • 月経周期の変化に伴って症状が変動する
  • ホットフラッシュ(ほてり)の直前や最中にめまいが起こりやすい
  • 朝方や夕方など、一日の中でも症状が強くなる時間帯がある
  • 睡眠不足の翌日に症状が悪化することが多い
  • ストレスを感じた数時間後または翌日に症状が現れやすい

また、更年期のめまいは複数のタイプが混在することも特徴です。例えば、慢性的なふわふわ感がベースにあり、時折回転性めまいが重なるといったケースも少なくありません。

日本女性医学学会誌の研究によると、更年期のめまいは単独で現れるよりも、ほてりや発汗、不眠などの他の更年期症状と同時に現れることが多いとされています。

これらのめまいは生活の質を大きく低下させる可能性がありますが、タイプを正確に把握することで、より適切な対処法を選択できるようになります。めまいのタイプによって適した対処法や治療法が異なるため、ご自身の症状をよく観察することが大切です。

3. 更年期のめまいの原因と関連症状

更年期のハートマーク

更年期に起こるめまいは、単なる偶然ではなく、ホルモンバランスの変化が引き起こす身体反応の一つです。この章では、めまいが生じる根本的な原因と、他の更年期症状との関連性について詳しく解説します。

3.1 エストロゲン減少による自律神経への影響

更年期のめまいの主な原因は、エストロゲン(女性ホルモン)の減少です。エストロゲンは脳内の血管拡張作用があり、血流を調整する重要な役割を担っています。

エストロゲンが減少すると、次のような影響が現れます:

  • 脳への血流が不安定になる
  • 自律神経系のバランスが崩れる
  • 内耳の血流が変化する
  • めまいセンサーの感度が変化する

自律神経は体の様々な機能を無意識のうちにコントロールしており、その乱れはめまいだけでなく多様な身体症状を引き起こします。研究によると、更年期女性の約40%が自律神経の乱れによるめまいを経験するとされています。

3.2 血圧変動とめまいの関係

更年期に入ると、ホルモンバランスの変化により血圧調整機能にも影響が出ます。特に起立性低血圧(立ち上がった時に血圧が急激に下がる状態)が起こりやすくなります。

血圧変動の種類 めまいとの関連 主な症状
起立性低血圧 姿勢変化時のめまい 急に立ち上がった時の目の前が暗くなる感覚
血圧の変動 日内変動によるめまい 朝起きた時や夕方に現れるふらつき
高血圧 持続的な不安定感 頭重感を伴うめまい

更年期には血管の柔軟性も低下するため、血圧変動に対する身体の適応能力が弱まります。これが突然のめまい感や立ちくらみの原因となることが多いです。

3.3 めまいと一緒に現れる更年期症状

めまいは単独で現れることは少なく、他の更年期症状と併せて出現することが特徴的です。これらの症状が組み合わさることで、生活の質に大きな影響を与えることがあります。

3.3.1 ほてり・のぼせとの関連性

ほてりやのぼせは更年期の代表的な症状で、めまいと密接に関連しています。ほてりの際に起こる急激な血管拡張と収縮は、一時的な脳血流の変化を引き起こし、めまい感につながります

典型的なパターンとしては:

  • ほてりが起きる → 顔や上半身が熱くなる → 血管が急激に拡張 → 脳血流が変化 → めまいを感じる
  • ほてりが収まる → 発汗が起こる → 血管が収縮 → 再び脳血流が変化 → めまいが続く

この一連の流れは数分間続くことが多く、日中に何度も繰り返すことでめまいの感覚が持続することがあります。

3.3.2 睡眠障害との関係

更年期女性の約60%が睡眠障害を経験すると言われており、これはめまいと双方向的な関係にあります。

睡眠不足やその質の低下は:

  • 自律神経のバランスをさらに崩す
  • 内耳機能に影響を与える
  • 脳の疲労を引き起こし、めまいの閾値を下げる
  • 日中の集中力低下につながり、めまい感を増強させる

一方で、めまいによる不安感や恐怖感が睡眠の質を下げるという悪循環も生じます。日本女性医学学会の調査では、めまいと睡眠障害を同時に訴える更年期女性は、いずれか単独の症状よりも生活の質が低下する傾向が示されています。

3.3.3 頭痛や肩こりとの併発

更年期のめまいは、頭痛や肩こりといった症状とセットで現れることが多いです。これらの症状が組み合わさると、日常生活への影響はさらに大きくなります。

併発症状 めまいとの関連メカニズム 対処のポイント
頭痛(緊張型) 首や肩の筋肉の緊張が内耳への血流を阻害 首・肩のストレッチ、温熱療法
肩こり 自律神経の乱れによる筋緊張と血流低下 リラクゼーション、適度な運動
倦怠感 ホルモン減少による代謝低下と自律神経障害 規則正しい生活、軽い有酸素運動

特に注目すべきは、首や肩の筋肉の緊張が内耳への血流を阻害することで、めまいを誘発・悪化させる可能性があるという点です。このため、肩こりのケアがめまいの改善につながることもあります。

更年期におけるめまいは、単一の原因ではなく、ホルモン変化を基盤とした複合的な身体反応の結果として現れます。次章では、これらの症状を悪化させる生活習慣について詳しく解説します。

4. 更年期のめまいを悪化させる生活習慣

チェックの札を持つ更年期専門医

更年期のめまいは、ホルモンバランスの乱れだけでなく、日常生活の習慣によって悪化する場合があります。特に気をつけるべき生活習慣を理解し、改善することで症状を和らげることが可能です。

4.1 ストレスとめまいの悪循環

ストレスは更年期のめまいを悪化させる大きな要因です。ストレスを感じると自律神経のバランスが乱れ、めまいを引き起こしやすくなります。

ストレスによって血管が収縮し、脳への血流が一時的に減少することでめまい感が強まることがわかっています。また、ストレスによって筋肉が緊張すると、特に首や肩の筋肉の緊張が内耳の血流を悪化させ、めまいを誘発することもあります。

さらに厄介なのは、めまいそのものがストレスの原因となり、悪循環に陥りやすいという点です。「めまいが起きるのではないか」という不安が日常生活に支障をきたし、それがさらなるストレスとなります。

ストレス要因 めまいへの影響
精神的緊張 自律神経の乱れ→血管収縮→めまい
過度の心配・不安 筋緊張→内耳血流低下→めまい
めまいへの恐怖 更なるストレス→症状悪化の悪循環

日本心身医学会の研究によると、更年期女性の約65%がストレスとめまいの関連を自覚しているとされています。

4.2 睡眠不足の影響

質の良い睡眠は自律神経のバランスを整える上で非常に重要です。更年期に入ると寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりする睡眠障害が増加します。

睡眠不足は脳の疲労を招き、平衡感覚を司る脳の機能が低下することでめまいを悪化させます。また、睡眠中は身体の修復や回復が行われるため、十分な睡眠が取れないと内耳機能の回復も妨げられます。

国立睡眠財団の調査によると、6時間未満の睡眠を続けると、めまいなどの神経症状が約1.8倍になるというデータもあります。

睡眠の問題 めまいへの影響
睡眠時間の不足 平衡感覚の機能低下→めまいの増加
睡眠の質の低下 自律神経機能の乱れ→血圧変動→めまい
不規則な睡眠習慣 体内時計の乱れ→ホルモンバランス悪化→めまい

更年期特有のほてりやのぼせが夜間に起こると、睡眠の質がさらに低下し、めまいを含む更年期症状全体を悪化させる要因となります。

4.3 偏った食生活との関連

バランスの取れた食事は、めまい予防に欠かせません。特に更年期では、栄養バランスがホルモン調整に大きく影響します。

塩分の過剰摂取は体液バランスを崩し、血圧の乱高下を招くことでめまいを誘発する可能性があります。また、カフェインやアルコールの過剰摂取も利尿作用により脱水状態を引き起こし、めまいの原因となることがあります。

日本栄養士会が提供する情報によれば、ビタミンB群、特にビタミンB12や葉酸の不足は神経系の機能に影響を与え、めまいの症状を悪化させる可能性があります。

問題のある食習慣 めまいへの影響
塩分過多 体液バランスの乱れ→血圧変動→めまい
カフェイン・アルコール過剰 脱水→血流低下→めまい
栄養素不足(特にビタミンB群) 神経機能低下→平衡感覚障害→めまい
食事の不規則性 血糖値の乱高下→自律神経への影響→めまい

また、食事の時間が不規則だと血糖値が大きく変動し、これも自律神経に負担をかけ、めまいを悪化させます。特に空腹時の低血糖はめまいや立ちくらみの原因になりやすいため注意が必要です。

日本栄養士会では、更年期の女性に特に意識してほしい栄養素として、カルシウム、マグネシウム、ビタミンDなども挙げています。これらは骨の健康だけでなく、筋肉の機能維持や神経伝達にも関わっており、間接的にめまい予防にも役立ちます。

4.4 運動不足がもたらす影響

適度な運動は血行を促進し、自律神経のバランスを整える効果があります。しかし、運動不足になると全身の血行が悪化し、めまいの発生リスクが高まります。

特に更年期では、筋力が低下しやすく、これが平衡感覚にも影響を与えることでめまいを感じやすくなります。バランス感覚を司る小脳や前庭系の機能も、日常的に身体を動かすことで維持されるものです。

日本運動疫学会の研究では、週に3回以上の適度な運動を行っている更年期女性は、運動習慣のない女性に比べてめまいの発生頻度が約40%低いという結果が報告されています。

運動不足の影響 めまいとの関連
血行不良 内耳や脳への血流低下→めまい
筋力低下 姿勢保持能力の低下→平衡感覚の乱れ→めまい
前庭機能の低下 バランス感覚の鈍化→姿勢変化時のめまい増加
自律神経の乱れ 血圧調整機能の低下→起立時めまい

特に注意すべきは、デスクワークなど同じ姿勢を長時間続けることです。これにより首や肩の筋肉が緊張し、内耳への血流が滞りやすくなります。1時間に1回程度は姿勢を変えたり、軽いストレッチを行うことが推奨されています。

医学ジャーナル「日本更年期学会誌」によると、ウォーキングやヨガなどの軽度から中程度の運動が、更年期のめまい症状改善に効果的であるとされています。特に、平衡感覚を鍛える運動は前庭機能を活性化し、めまい予防に直接的な効果があります。

これらの生活習慣の改善は、薬物療法と併用することで更年期のめまい症状を効果的に軽減できることが多くの研究で示されています。次章では、これらの悪化要因を踏まえた具体的な対処法について詳しく解説します。

5. 更年期のめまいへの今すぐできる対処法

ザクロを持つ更年期の女性

更年期のめまいは突然襲ってくることが多く、日常生活に支障をきたすことがあります。ここでは、めまいのタイプ別に今すぐできる対処法と応急処置について解説します。

5.1 症状別の応急対応

めまいの種類によって効果的な対処法が異なります。自分のめまいのタイプを知り、適切な対応をすることで症状を和らげることができます。

5.1.1 ふわふわめまい(浮動性めまい)への対処

ふわふわした感覚や地面が不安定に感じる浮動性めまいには、次の対処法が効果的です:

  • その場でゆっくり座る:めまいを感じたらまず安全を確保し、可能であれば椅子に座りましょう
  • 深呼吸を数回繰り返す:ゆっくりと鼻から吸って口から吐く呼吸を5回ほど行います
  • 水分を少しずつ摂取:脱水もめまいを悪化させるため、常温の水を少しずつ飲みましょう
  • 視線を一点に固定:目の前の壁や物体など、動かない対象に視線を集中させると安定感が増します

ふわふわめまいが落ち着いてきたら、ゆっくりと体を動かし、症状が再発しないか確認しましょう。

5.1.2 ぐるぐるめまい(回転性めまい)への対処

部屋や自分自身が回っているように感じる回転性めまいは、より強い症状のため、すぐに行動できないこともあります:

  • 横になって安静にする:安全な場所で横になり、目を閉じて安静にしましょう
  • 頭の動きを最小限にする:頭を動かすとめまいが悪化するため、なるべく同じ姿勢を保ちます
  • 吐き気がある場合は横向きで寝る:嘔吐時の誤嚥を防ぐために、体を横向きにしておきましょう
  • 急な姿勢変換を避ける:症状が和らいできても、急に立ち上がったり頭を動かしたりしないようにします
回転性めまいの強さ 推奨される対応 注意点
軽度(歩行可能) 座って休み、深呼吸 無理に動かない
中度(歩行困難) 横になって安静 頭部を動かさない
重度(吐き気伴う) 横向きで寝て救助を求める 必要に応じて医療機関へ

5.1.3 立ちくらみ型めまいへの対処

急に立ち上がった時などに起こる立ちくらみ型めまいは、血圧の急激な変動が原因であることが多いです:

  • その場でしゃがむか座る:転倒を防ぐため、安全な姿勢を取りましょう
  • 足首を上下に動かす:下肢の筋肉を動かすことで血液の循環を促進します
  • 頭を少し下げる:頭部への血流を増やすために、頭をやや下に傾けると効果的です
  • ゆっくりと行動する:座った状態から立ち上がる際は一度膝を伸ばして少し待ってから完全に立ち上がるようにします

更年期の立ちくらみ型めまいには、塩分を適度に含む飲み物(例:薄い塩水やスポーツドリンク)も効果的なことがあります。ただし、高血圧の方は医師に相談してください。

5.2 めまい発作時の安全確保と緊急対応

めまい発作は予測できないことが多く、安全の確保が最優先です:

  • 危険な場所からすぐに離れる:キッチンや階段、運転中などでめまいを感じたら、まず安全な場所に移動します
  • 周囲の人に状況を伝える:一人でいない場合は、めまいがすることを周囲に伝え、必要に応じて助けを求めましょう
  • 手すりや壁につかまる:転倒を防ぐため、何かにつかまれる状態を確保します
  • 鋭利なものや熱いものから離れる:めまいによる事故を防ぐため、危険なものから距離を取りましょう

次のような症状を伴うめまいは、緊急性が高い可能性があります:

  • 激しい頭痛や首の痛みを伴うめまい
  • 言葉が出にくい、顔や手足の片側がしびれるなどの症状を伴う場合
  • 意識が遠のく、もうろうとする
  • 激しい嘔吐が止まらない
  • 高熱を伴うめまい

これらの症状がある場合は、救急車を呼ぶなど早急な医療対応が必要です。

5.3 家庭でできるめまい改善エクササイズ

自宅で簡単にできる以下のエクササイズは、めまいの予防や軽減に効果があります:

5.3.1 1. 前庭リハビリ運動(ブランドT運動)

内耳の平衡感覚を鍛えるエクササイズです:

  1. 椅子に座り、目の前30cm程度の場所にペンなどの目印を置きます
  2. 目印を見つめながら、頭だけをゆっくり左右に動かします(10回程度)
  3. 次に同じく目印を見つめたまま、頭を上下に動かします(10回程度)
  4. 最後に頭を固定し、目印を左右、上下に動かしながら目で追います

1日2回、症状がない時に行うのが効果的です。最初は軽いめまいを感じることがありますが、継続することで体が慣れていきます。

5.3.2 2. 深呼吸と首のストレッチ

自律神経のバランスを整え、血流を改善するエクササイズです:

  1. 椅子に座った状態で背筋を伸ばします
  2. ゆっくりと4秒かけて鼻から息を吸い、6秒かけて口から吐きます(5回繰り返す)
  3. 肩の力を抜いて、頭をゆっくりと右に傾け、20秒キープします
  4. 同様に左側も行います
  5. 次に首を前後にゆっくり傾け、各方向20秒キープします

このエクササイズは1日3回、朝・昼・晩に行うと効果的です。特に首周りの血流改善は自律神経のバランスを整えるのに効果的とされています。

5.3.3 3. 足首ポンプ運動

立ちくらみ型めまいの予防に効果的な下肢の血流改善エクササイズです:

  1. 椅子に座った状態で、足を少し浮かせます
  2. 足首をゆっくりと上下に動かします(足先を上に向け、次に下に向ける)
  3. 各方向10回ずつ、1日数回行います

特に朝起きた時や長時間座った後に立ち上がる前に行うと効果的です。

エクササイズ 効果 頻度
前庭リハビリ運動 平衡感覚の改善、めまい耐性の向上 1日2回(朝・夕)
深呼吸と首のストレッチ 自律神経バランスの改善、首の血流促進 1日3回(朝・昼・晩)
足首ポンプ運動 下肢の血流改善、立ちくらみ予防 姿勢変換前、1日数回

これらのエクササイズは、めまいの症状がない時や軽い時に行うのが効果的です。強いめまいがある時は無理に行わず、まずは安静にしましょう。

また、研究によると、定期的なこれらのエクササイズの実施により、更年期に関連するめまいの頻度や強度が減少したという報告があります。継続することで効果を実感できるでしょう。

更年期のめまいは一時的な症状であることが多いですが、日常生活に支障をきたす場合は、これらの対処法を試しながら症状の変化を記録し、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。

6. 更年期のめまいを和らげる生活習慣の改善

更年期に良い栄養素が入った食品

更年期のめまいは生活習慣の改善によって症状を軽減できる可能性があります。食事、水分摂取、睡眠の質、ストレス管理など、日常生活の中で取り入れられる対策を詳しく見ていきましょう。

6.1 食事でできるめまい対策

更年期のめまい軽減には、バランスの取れた食事が重要です。特に女性ホルモンの減少を補う食材や、自律神経の安定に役立つ栄養素を意識して摂ることが効果的です。

女性ホルモンに似た作用がある大豆イソフラボンを含む食品(豆腐、納豆、豆乳など)を積極的に取り入れましょう。厚生労働省e-ヘルスネットによると、イソフラボンは弱い女性ホルモン様作用があり、更年期症状の緩和に役立つ可能性があります。

また、血糖値の急上昇・急降下はめまいを誘発することがあるため、血糖値を安定させる食習慣も大切です。具体的には:

  • 精製された炭水化物を控え、玄米や全粒粉など食物繊維が豊富な食品を選ぶ
  • タンパク質(魚、鶏肉、豆類など)を各食事に取り入れる
  • オメガ3脂肪酸(青魚、亜麻仁油、くるみなど)を意識して摂取する
  • マグネシウム(ほうれん草、アーモンド、玄米など)は血管拡張に役立つ
栄養素 効果 おすすめ食材
大豆イソフラボン 女性ホルモン様作用 豆腐、納豆、豆乳、枝豆
ビタミンE 血行促進、ホルモンバランス調整 アーモンド、ひまわり油、かぼちゃ
ビタミンB群 自律神経の安定 レバー、卵、緑黄色野菜、豚肉
マグネシウム 血管拡張、筋肉の緊張緩和 ほうれん草、アーモンド、バナナ

カフェインやアルコールは、めまいを悪化させることがあるため、適量を心がけるか、症状が重い時は一時的に控えることも検討しましょう。

6.2 適切な水分摂取の重要性

脱水状態はめまいを引き起こす大きな要因になります。特に更年期ではほてりや発汗が増えることで、気づかないうちに脱水状態に陥りやすくなっています。

1日に1.5〜2リットルの水分摂取を目標にしましょう。厚生労働省の食事摂取基準では、成人女性の水分摂取の目安として、食事以外からの水分として約1.2リットルが推奨されています。

水分摂取のポイント:

  • 朝起きたらまず一杯の水を飲む習慣をつける
  • マイボトルを持ち歩き、小まめに水分補給する
  • カフェインが含まれるコーヒーや紅茶は利尿作用があるため、純粋な水分補給としてはカウントしない
  • スポーツドリンクは糖分が多いため常用せず、激しい発汗時のみ利用する
  • ハーブティー(カモミール、ペパーミントなど)は自律神経を整える効果も期待できる

特に、めまいを感じたときはすぐに水分を摂ることで、症状が軽減することもあります。

6.3 質の良い睡眠のための工夫

更年期女性の約70〜80%が何らかの睡眠障害を経験すると言われています。睡眠の質が低下すると自律神経のバランスが崩れ、めまいの頻度や強さが増す可能性があります。

質の良い睡眠を得るための具体的な方法:

  • 就寝時間と起床時間を一定に保つ(休日も含めて)
  • 寝る1〜2時間前からブルーライトを避ける(スマートフォンやパソコンの利用を控える)
  • 寝室の温度は26℃以下、湿度は50〜60%に保つ
  • 夕方以降のカフェイン摂取を避ける
  • 就寝前の軽いストレッチやヨガで体をリラックスさせる
  • 入浴は就寝の1〜2時間前に済ませ、体温の自然な低下を促す

ホットミルクやカモミールティーなどには、自然な睡眠を促す効果があるとされています。米国国立医学図書館の研究によると、カモミールには軽度から中等度の不安障害や不眠症に効果があるとされています。

また、寝具の見直しも睡眠の質向上に役立ちます。特に首や肩のサポートが適切な枕を選ぶことで、頸部の血流が改善され、めまいの軽減につながる場合もあります。

6.4 ストレス管理テクニック

ストレスは自律神経のバランスを乱し、めまいを悪化させる大きな要因です。更年期はホルモンバランスの変化によりストレスへの耐性が低下しやすい時期でもあります。

日常的に取り入れられるストレス管理法をいくつか紹介します:

  1. 深呼吸法:腹式呼吸を意識し、4秒かけて吸い、7秒間息を止め、8秒かけて吐く「4-7-8呼吸法」は交感神経を鎮める効果があります。
  2. マインドフルネス瞑想:1日5〜10分でも継続することで、ストレス対処能力が高まります。アプリなどを活用すると始めやすいでしょう。
  3. 自然の中での活動:環境省の森林浴効果によると、森林での散歩は「森林浴」として心身のリラックス効果があります。
  4. 趣味の時間確保:集中できる好きな活動は、脳内の幸福物質セロトニンの分泌を促します。
  5. アロマセラピー:ラベンダーやベルガモットなどの精油には、自律神経を整える効果が期待できます。

また、認知行動療法の考え方を取り入れることも有効です。ネガティブな思考パターンに気づき、より現実的で前向きな考え方に置き換える習慣をつけることで、ストレスへの反応を変えることができます。

自分だけで対処が難しい場合は、信頼できる友人や家族に話を聞いてもらうことも重要なストレス対処法です。必要に応じて、心理カウンセラーなどの専門家に相談することも検討してみましょう。

これらの生活習慣の改善は一度にすべて取り入れる必要はありません。無理なく続けられるものから少しずつ始め、自分のライフスタイルに合わせて調整していくことが大切です。めまいの症状だけでなく、更年期全体の不調改善にもつながるはずです。

7. 更年期のめまいに効果的な運動療法

運動をする女性

更年期に伴うめまいは、適切な運動を継続することで症状を軽減できる可能性があります。特に平衡感覚を鍛える運動や軽い有酸素運動は、自律神経のバランスを整え、めまい症状の改善に役立ちます。ここでは、更年期のめまいに効果的な運動法をご紹介します。

7.1 めまいに効く簡単ストレッチ

首や肩の筋肉の緊張は、めまいを悪化させることがあります。以下のストレッチは自宅で簡単に実践でき、血流改善やリラックス効果も期待できます。

首のストレッチは特に効果的です。ゆっくりと首を右、左、前、後ろに傾け、各方向で15~30秒ずつキープします。痛みを感じる場合は無理をせず、心地よく伸びる範囲で行いましょう。

また、肩の緊張をほぐす肩回しエクササイズも効果的です。両肩をゆっくりと前回し10回、後ろ回し10回を行います。これにより首から肩にかけての血流が改善され、頭部への血流も促進されます。

これらのストレッチは1日2~3回、特に朝起きた時と就寝前に行うのが理想的です。

ストレッチの種類 効果 実施回数
首のストレッチ 頸部の血流改善、緊張緩和 各方向15-30秒×2セット
肩回しエクササイズ 肩こり改善、上半身の血流促進 前後各10回×2セット
胸を開くストレッチ 呼吸改善、姿勢矯正 15-20秒×3回

7.2 平衡感覚を鍛える運動

めまいに悩む方にとって、平衡感覚を鍛えることは非常に重要です。これらの運動は徐々に難易度を上げていくことで、脳の平衡感覚センターの働きを改善します。

片足立ちエクササイズは最も基本的な平衡感覚トレーニングです。壁の近くで安全に行い、最初は30秒から始め、慣れてきたら目を閉じるなど難易度を上げていきましょう。

また、研究によれば、太極拳やヨガなどのゆっくりとした動きを伴う運動も平衡感覚の向上に効果的です。特に「木のポーズ」や「戦士のポーズ」などは安定性を高めるのに役立ちます。

さらに進んだ方法として、バランスボードやバランスクッションを使った運動も効果的です。不安定な面の上で立つことで、体のバランス感覚が鍛えられます。ただし、転倒リスクがあるため、必ず誰かがそばにいる状態で行うようにしましょう。

7.3 継続できる有酸素運動のポイント

有酸素運動は全身の血流を改善し、自律神経のバランスを整える効果があります。更年期のめまいに悩む方にとっては、激しすぎない適度な運動を継続することが重要です。

ウォーキングは最も手軽で効果的な有酸素運動です。1日20~30分、週3~4回のペースで行うことを目標にしましょう。特に自然の中を歩くことで、リラックス効果も得られます。

水中ウォーキングや水泳も関節への負担が少なく、めまいがある方にも安心して行える運動です。水の浮力と抵抗を利用することで、陸上よりも安全に全身運動ができます。

有酸素運動を継続するためのポイントは、無理のない範囲で行うことです。以下の点に注意しましょう:

  • 運動前後の水分補給を忘れずに行う
  • 急に立ち上がるなど急激な体位変換を避ける
  • めまいを感じたらすぐに休憩する
  • 一人で行わず、できるだけ誰かと一緒に運動する
  • 徐々に運動量を増やし、体を慣らしていく

日本女性医学学会の報告によると、適度な有酸素運動は更年期症状全般の緩和に効果があるとされています。特に週150分の中強度の有酸素運動が推奨されていますが、めまいがある場合は低強度から始め、様子を見ながら強度を上げていくことが大切です。

運動の種類 おすすめの頻度 めまいへの効果
ウォーキング 週3-4回、20-30分 自律神経バランス改善、血流促進
水中運動 週2-3回、30分 全身血流改善、転倒リスク軽減
ヨガ・太極拳 週2回、30-40分 平衡感覚向上、リラックス効果
自転車(固定式) 週2-3回、15-20分 下半身の血流改善、心肺機能向上

運動を始める前に、自分の体調や体力に合わせて無理のないプログラムを計画することが大切です。めまいの症状が重い場合は、まず医療機関に相談し、運動療法の適否について確認することをおすすめします。

継続は力なりとはいえ、無理な運動はかえって症状を悪化させることもあります。「続けられる運動」を見つけることが、更年期のめまい改善への近道となるでしょう。

8. 更年期のめまいと受診のタイミング

更年期専門の女性医師

更年期のめまいは、多くの場合は自己管理や生活習慣の改善で対処できる症状です。しかし、中には医療機関での診察が必要なケースもあります。いつ、どのような状況で受診すべきか、また受診時にどう症状を伝えるべきかについて解説します。

8.1 すぐに病院を受診すべき危険なめまいの症状

更年期によるめまいと思っていても、実は別の重大な疾患が隠れている可能性があります。以下のような症状がある場合は、すぐに救急外来を受診することをお勧めします

危険なめまいの兆候 考えられる疾患 緊急度
突然の激しいめまいと意識障害 脳卒中の可能性 最高(即時)
めまいに加えて言語障害や片側の手足の麻痺 小脳梗塞などの脳血管障害 最高(即時)
今までに経験したことのない激しい頭痛とめまい 脳出血、くも膜下出血など 最高(即時)
数時間以上続く激しいめまいと嘔吐 メニエール病など 高(当日中)

また、以下のような場合も早めの受診が推奨されます:

  • 日常生活に支障をきたすほどのめまいが続く
  • めまいが2週間以上改善しない
  • 頻繁にめまい発作が起こる(週に3回以上)
  • めまいと共に聴力低下や耳鳴りがある
  • 高血圧、糖尿病、心疾患などの基礎疾患がある場合のめまい

日本めまい平衡医学会によると、めまいを伴う脳血管障害の場合、初期対応が予後を大きく左右するとされています。判断に迷ったら、受診することをためらわないでください。

8.2 どの診療科を受診すべきか

めまいの種類や随伴症状によって、適切な診療科は異なります。更年期のめまいの場合、以下の診療科が考えられます:

症状の特徴 受診すべき診療科 検査・診断内容
回転性めまい(ぐるぐる)、耳鳴り 耳鼻咽喉科 平衡機能検査、聴力検査
ホットフラッシュ、発汗などの更年期症状も強い 婦人科(産婦人科) ホルモン検査、更年期症状の評価
立ちくらみ、頭痛を伴うめまい 内科・循環器内科 血圧測定、心電図、血液検査
頭痛や意識障害を伴うめまい 脳神経内科・脳神経外科 頭部CT/MRI、脳血流検査

まずは総合内科や婦人科を受診し、必要に応じて専門科への紹介を受けるのも良い方法です。厚生労働省の健康づくり情報でも、症状に応じた適切な受診科の選択が推奨されています。

8.3 医師に伝えるべき症状のポイント

めまいを訴える際、具体的な情報を伝えることで、正確な診断につながります。以下のポイントを整理しておきましょう:

  1. めまいの性質:「ぐるぐる回る」のか「ふわふわ浮く感じ」なのか
  2. めまいの持続時間と頻度:数秒なのか数時間なのか、毎日なのか週に数回なのか
  3. めまいが起こる状況:起床時、体位変換時、特定の動作の後など
  4. 随伴症状:吐き気、耳鳴り、聴力低下、ほてり、頭痛など
  5. 生活習慣や環境の変化:ストレス、睡眠不足、食生活の乱れなど
  6. 現在服用中の薬:血圧の薬、睡眠薬、サプリメントなど
  7. 月経の状況:周期、量、最終月経日など

症状を記録したメモやカレンダーがあると、医師への説明がスムーズになります。スマートフォンのメモ機能やアプリを使って、めまいの発生状況を記録しておくのも良いでしょう。

また、初診時には以下の情報も重要です:

  • 更年期症状チェックシートに記入(日本女性医学学会の基準に基づくもの)
  • 既往歴(特に耳の病気、高血圧、めまいの既往など)
  • 家族歴(特にめまい疾患や更年期障害)

更年期におけるめまいは、自律神経の乱れから来ることが多いですが、他の病気が隠れている可能性もあります。症状が気になる場合は、自己判断せずに適切な診療科を受診することが大切です。特にめまいが突然発症し、いつもと違う激しさがある場合は、脳の疾患の可能性も考慮して早急な受診が必要です。

9. 更年期のめまいに対する治療法

更年期障害を治療する薬を持つ手

更年期に伴うめまいは、女性ホルモンの変動による自律神経への影響が主な原因です。治療法を選ぶ際は、めまいの種類や重症度、他の更年期症状の有無などを考慮して、最適な方法を選択することが重要です。

9.1 ホルモン補充療法(HRT)の効果と副作用

ホルモン補充療法(HRT)は、減少したエストロゲンを補うことで更年期症状を緩和する治療法です。めまいを含む様々な更年期症状の改善に効果を示すことがあります。

エストロゲンの補充により、自律神経のバランスが整い、めまいの頻度や強さが軽減されるケースが多く報告されています。特に、ほてりやのぼせと同時に起こるめまいに対して効果的とされています。

HRTのメリット HRTのリスク・副作用
めまいの軽減 乳房の張りや痛み
ほてり・のぼせの緩和 不正出血
睡眠の質改善 血栓症リスクの上昇
骨密度維持 子宮内膜がんリスク(プロゲステロンを併用しない場合)

HRTの開始を検討する際は、個人の健康状態や家族歴を考慮した上で、リスクとベネフィットを慎重に検討する必要があります。特に、乳がんや血栓症の既往歴がある方は注意が必要です。

日本女性医学学会の「ホルモン補充療法ガイドライン」によると、適切な管理下でのHRTは多くの女性にとって安全で効果的な選択肢となり得ます。

9.2 漢方薬による治療

漢方薬は更年期症状の緩和に広く用いられており、めまいに対しても効果を発揮することがあります。西洋医学的な治療法と比較して副作用が少ないという特徴があります。

漢方薬は体質や症状のパターンに合わせて処方されるため、同じめまいでも体質によって最適な処方が異なります

漢方薬の種類 適応症状 特徴
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 冷え症を伴うめまい、立ちくらみ 血虚(貧血気味)の体質に効果的
加味逍遙散(かみしょうようさん) イライラ、のぼせ、めまいの複合症状 ストレスによる症状に有効
釣藤散(ちょうとうさん) 高血圧傾向のある人のめまい、頭痛 自律神経の乱れを整える効果
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう) メニエール病様のめまい、吐き気 水分代謝を改善し、めまいを軽減

漢方薬の効果は個人差が大きく、効果が表れるまでに2〜4週間程度かかることが一般的です。また、西洋薬との併用も可能ですが、事前に相談することをおすすめします。

日本東洋医学会の調査によると、更年期症状に対する漢方治療は70%以上の女性に何らかの改善効果をもたらすとされています。

9.3 めまいを抑える薬物療法

更年期に伴うめまいに対して、症状を直接的に抑える薬物療法も選択肢の一つです。めまいの種類や原因に応じて、適切な薬剤が選択されます。

9.3.1 抗めまい薬

めまいの症状そのものを和らげる薬剤として、メリスロン(ベタヒスチンメシル酸塩)やトラベルミン(ジフェンヒドラミン塩酸塩)などが用いられることがあります。特に回転性めまい(ぐるぐる感)に対して効果を発揮します。

9.3.2 自律神経調整薬

更年期のめまいは自律神経の乱れが原因であることが多いため、自律神経を整える薬剤が処方されることがあります。これらは特にふわふわ感(浮動性めまい)や立ちくらみに効果的です。

9.3.3 抗不安薬・抗うつ薬

めまいがストレスや不安、抑うつ状態と関連している場合、少量の抗不安薬や抗うつ薬が使用されることがあります。これらは心因性めまいに対して効果を示すことがあります。

薬物療法を選択する際の注意点として、めまい薬の多くは眠気や口渇などの副作用を伴うことがあります。また、長期的な使用よりも、症状が強い時の一時的な対処として用いることが一般的です。

9.4 代替療法の可能性

医学的な治療以外にも、様々な代替療法が更年期のめまい改善に役立つ可能性があります。科学的なエビデンスは限られていますが、多くの女性が症状の軽減を報告しています。

9.4.1 鍼灸療法

鍼灸は東洋医学に基づく治療法で、特定のツボを刺激することで気の流れを整え、自律神経のバランスを改善する効果が期待されます。「日本東洋医学会誌の研究」によると、更年期症状全般に対して鍼灸が一定の効果を示すことが報告されています。

9.4.2 アロマセラピー

特定の精油の香りを利用するアロマセラピーは、自律神経を整え、リラクゼーション効果をもたらすことがあります。ラベンダーやローズウッド、クラリセージなどが更年期症状の緩和に用いられることが多いです。

9.4.3 ヨガとマインドフルネス

定期的なヨガの実践やマインドフルネス瞑想は、ストレスを軽減し、自律神経のバランスを整えることで、めまいを含む更年期症状の改善に寄与する可能性があります。特に呼吸法を取り入れたヨガは、めまい発作時の不安感を和らげるのに役立ちます。

米国の更年期学会(NAMS)の報告によると、定期的なヨガの実践は、ほてりやのぼせと関連するめまいの軽減に効果があるとされています。

9.4.4 サプリメントと食品

一部のハーブやサプリメントも更年期症状の緩和に役立つ可能性があります:

  • 大豆イソフラボン:植物性エストロゲンとして作用し、ホルモンバランスを整える
  • セントジョーンズワート:気分の安定に寄与する
  • イブニングプリムローズオイル:ホルモンバランスの調整を助ける
  • マグネシウム:筋肉の緊張を緩和し、神経系の安定化に寄与

これらの代替療法は、通常の医学的治療を補完するものとして考えるとよいでしょう。特に、サプリメントは薬との相互作用があることもあるため、使用前に専門家に相談することが重要です。

更年期のめまいに対する治療は、症状の程度や個人の全体的な健康状態によって最適なアプローチが異なります。ライフスタイルの改善と組み合わせることで、より効果的に症状を管理できる可能性が高まります。

10. 更年期のめまいと間違えやすい疾患

チェックの画像

更年期に経験するめまいは、他の病気による症状と似ていることがあります。適切な対処法を見つけるためには、更年期特有のめまいと他の疾患によるめまいを見分けることが重要です。ここでは、更年期のめまいと混同されやすい代表的な疾患について解説します。

10.1 メニエール病との違い

メニエール病は、内耳の障害によって引き起こされる疾患で、回転性のめまい発作が特徴です。更年期のめまいとの主な違いを以下に示します。

症状 メニエール病 更年期のめまい
めまいの性質 激しい回転性めまい(ぐるぐる) 様々なタイプ(ふわふわ感が多い)
発作の持続時間 20分~数時間続く 短時間のことが多い
随伴症状 耳鳴り、難聴、耳閉感 ほてり、発汗、不眠など更年期特有の症状
年齢層 30~50代に多い 45~55歳頃の更年期の女性

メニエール病の場合、めまい発作に加えて耳鳴りや難聴を伴うことが特徴的です。また、耳の中が詰まった感じ(耳閉感)も特徴です。これらの症状がなく、ほてりや発汗などの更年期症状と一緒にめまいが現れる場合は、更年期によるめまいの可能性が高いでしょう。

詳しくは日本耳鼻咽喉科学会のメニエール病の解説も参考になります。

10.2 良性発作性頭位めまい症との区別

良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、内耳の三半規管内に生じた耳石の異常によって起こるめまい疾患です。更年期のめまいとの区別ポイントを解説します。

特徴 良性発作性頭位めまい症 更年期のめまい
めまいの誘因 特定の頭位変換(寝返り、起き上がりなど) 体位変換だけでなく、様々な状況で発生
めまいの持続時間 数秒~1分程度の短時間 様々(数分~数時間続くこともある)
悪化要因 特定の動作を繰り返すと悪化 ストレス、疲労、ホルモン変動で悪化
随伴症状 通常は他の症状を伴わない ほてり、発汗、動悸など更年期症状を伴う

BPPVの最大の特徴は、特定の頭の動きや姿勢変換でのみめまいが誘発される点です。例えば、ベッドで寝返りを打った時や、上を見上げた時など、決まった動作でめまいが起こります。一方、更年期のめまいは特定の動作だけでなく、様々な状況で発生することが多いです。

BPPVは、日本めまい平衡医学会の解説によると、耳石置換法という簡単な体操で改善することが多いとされています。

10.3 貧血によるめまいとの比較

貧血も立ちくらみやめまいを引き起こす代表的な原因の一つです。更年期との関連性も含めて比較します。

項目 貧血によるめまい 更年期のめまい
めまいの特徴 立ちくらみ型が多い 様々なタイプ(ふわふわ感、ぐるぐる感など)
発生タイミング 急に立ち上がった時や長時間立っている時 日内変動あり、ホルモンの変動に関連
随伴症状 倦怠感、疲労感、息切れ、動悸 ほてり、発汗、イライラ、不眠など
原因 ヘモグロビン減少、鉄欠乏など エストロゲン減少による自律神経の乱れ

更年期女性は、月経過多などにより鉄欠乏性貧血を併発していることもあります。更年期と貧血が重なると、めまいの症状がより強く現れることがあるため、両方の可能性を考慮する必要があります。

血液検査で貧血の有無を確認することができます。貧血が原因の場合は、鉄分の摂取や原因となる疾患の治療が必要になります。日本消化器病学会の貧血の解説も参考になります。

10.4 重大な疾患を見逃さないために

更年期のめまいと思っていても、実はより深刻な病気のサインであることもあります。以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

  • 突然の激しいめまいと共に、片側の手足に力が入らない
  • ろれつが回らない、言葉が出にくい
  • 今までに経験したことのないような激しい頭痛を伴う
  • 視野が欠ける、物が二重に見える
  • 嘔吐を繰り返す
  • 意識がもうろうとする

これらの症状は、脳卒中や脳腫瘍などの緊急性の高い疾患の可能性があります。更年期だからと安易に判断せず、異変を感じたら専門家に相談することが大切です。

また、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病がある方は、これらの疾患とめまいの関連性についても考慮する必要があります。日本脳卒中学会による脳卒中の前兆症状の解説も参考にしてください。

めまいの鑑別診断には、発症状況や随伴症状の詳細な記録が役立ちます。いつ、どのような状況でめまいが起きたか、他にどんな症状があったかをメモしておくと、正確な診断につながります。

11. まとめ

更年期のめまいは、エストロゲン減少による自律神経の乱れが主な原因です。ふわふわ感(浮動性めまい)、ぐるぐる感(回転性めまい)、立ちくらみなど症状によって対処法が異なります。日常生活では、バランスの良い食事、適切な水分摂取、質の良い睡眠、ストレス管理が重要です。また、クラミラスト運動や簡単なストレッチが症状改善に効果的です。めまいが激しい場合や持続する場合は、婦人科や耳鼻科の受診をお勧めします。ホルモン補充療法や漢方薬「当帰芍薬散」などの治療法も選択肢となります。メニエール病など他の疾患との区別も大切です。正しい知識と対処法で、更年期のめまいを上手に乗り切りましょう。

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