ふわふわ・ぐるぐる…タイプ別【めまい 原因】と自分でできる対策法まとめ
「ふわふわする」「ぐるぐる回る」といった不快なめまいに悩まされていませんか?この記事では、めまいの主な原因を3つのタイプ別に徹底解説します。耳の病気から脳の異常、全身疾患まで、めまいを引き起こす様々な原因と特徴を医学的根拠とともに紹介。また、すぐに病院へ行くべき危険なサインや、自宅でできる対処法、予防策まで網羅しています。めまいの正体を知り、適切な対応ができるようになることで、不安を軽減し日常生活の質を向上させるヒントが満載です。
1. あなたのめまいはどのタイプ 主な症状をチェック
「めまい」と一言で言っても、その感覚や症状は人によって大きく異なります。めまいの原因を特定するためには、まず自分がどのタイプのめまいを経験しているかを知ることが重要です。主なめまいのタイプは、「回転性めまい」「浮動性めまい」「立ちくらみのようなめまい」の3つに分類できます。
めまいの原因を探るためには、ご自身の症状がどのタイプに当てはまるかを確認してみましょう。タイプによって考えられる原因疾患や対処法が異なります。
めまいのタイプ | 主な特徴 | 感覚の例え |
---|---|---|
回転性めまい | 自分や周囲が回っているような感覚 | ジェットコースターに乗った後のような感覚 |
浮動性めまい | ふわふわ、フラフラする不安定感 | 船に乗っているような揺れの感覚 |
立ちくらみ様めまい | クラッとする、目の前が暗くなる感覚 | 急に立ち上がった時のふらつき |
1.1 ぐるぐる目が回る 回転性めまい
回転性めまいは、自分自身や周囲の景色がぐるぐると回っているような感覚が特徴です。この種類のめまいは非常に不快で、以下のような症状を伴うことが多いです:
- 激しい回転感(自分が回っている、または周りが回っている)
- 吐き気や嘔吐
- 冷や汗
- 立っていられないほどのふらつき
- 目の動きが不随意に動く(眼振)
回転性めまいの特徴的な点として、特定の頭の動きや姿勢の変化によって症状が誘発されることがあります。例えば、ベッドで寝返りを打った時や、上を向いた時、急に立ち上がった時などです。
回転性めまいの発作は数秒から数分間続くことが多いですが、重度の場合は数時間、時には数日間続くこともあります。発作の間は日常生活に支障をきたすほど症状が強いことが特徴です。
このタイプのめまいは主に内耳の前庭器官の異常に関連していることが多く、「良性発作性頭位めまい症」「メニエール病」「前庭神経炎」などが原因として考えられます。
1.2 ふわふわ体が浮く感じ 浮動性めまい
浮動性めまいは、ふわふわと体が宙に浮いているような感覚や、地面が不安定に感じられる状態を指します。回転性めまいのような激しい回転感はありませんが、以下のような特徴があります:
- 地面が柔らかく感じる
- 船に乗っているような揺れの感覚
- 頭が重い、ぼんやりする
- ふらつき感(特に歩行時)
- 空間認識の違和感
- 集中力の低下
浮動性めまいの特徴として、症状が長期間にわたって持続することが多い点が挙げられます。数日から数週間、時には数か月以上続くケースもあります。また、症状の強さは変動することが多く、特にストレスや疲労時に悪化することがあります。
このタイプのめまいは、脳の循環障害、ストレス、自律神経の乱れ、更年期障害、心理的要因など、様々な原因から生じることがあります。ただし、中には脳梗塞や脳腫瘍などの重篤な疾患が隠れていることもあるため、長期間続く場合は注意が必要です。
浮動性めまいは、日常生活の質を大きく下げることがありますが、回転性めまいほど急激で激しい症状ではないため、我慢してしまう方も少なくありません。しかし、原因によっては早期治療が必要な場合もあるため、症状が続く場合は専門的な診断を受けることをお勧めします。
1.3 クラッとする立ちくらみのようなめまい
立ちくらみのようなめまいは、一時的に目の前が暗くなったり、クラッとする感覚が特徴です。このタイプのめまいは、以下のような症状を伴うことがあります:
- 急に立ち上がった時のふらつき
- 一時的な視野の暗転や視界のぼやけ
- 倒れそうになる感覚
- 軽い頭痛
- 冷や汗
- 顔面蒼白
- 脈が速くなる
このタイプのめまいの大きな特徴は、姿勢の変化に関連して起こりやすい点です。例えば、長時間座っていた後に急に立ち上がる、長時間立ちっぱなしでいる、暑い場所に長くいるなどの状況で発生しやすくなります。
立ちくらみのようなめまいは通常、数秒から数十秒程度の短時間で収まることが多いですが、重度の場合は失神(一時的な意識消失)に至ることもあります。
このタイプのめまいの主な原因としては、起立性低血圧、貧血、脱水、低血糖、不整脈などが考えられます。これらは脳への血流が一時的に不足することで起こります。
若い人でも加齢とともに起こりやすくなり、特に高齢者では薬の副作用として現れることもあります。頻繁に起こる場合や、症状が重い場合は、より重大な心血管系の問題が隠れている可能性もあるため、医療機関での検査が勧められます。
以上の3つのタイプを理解することで、自分のめまいがどのカテゴリーに属するのかを把握し、適切な対応を取ることができます。次の章では、各タイプのめまいの具体的な原因について詳しく見ていきましょう。
2. 回転性めまいの主な原因 耳の病気かも?
回転性めまいは、自分自身や周囲の景色がぐるぐると回っているような感覚を特徴とします。この症状は多くの場合、内耳(迷路)や前庭神経といった「平衡感覚を司る器官」に問題が生じていることが原因です。ここでは代表的な耳の病気とそれぞれの特徴について詳しく解説します。
2.1 良性発作性頭位めまい症(BPPV) 原因と特徴
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は回転性めまいの最も一般的な原因で、30〜60代の方に多く見られます。内耳の三半規管内にある「耳石」が本来あるべき場所から外れて浮遊することで発症します。
特定の頭位や体位の変換時に突然激しいめまいが生じるのが特徴です。例えば、寝返りを打った時や起き上がる時、上を見上げる時などの動作でめまいが誘発されます。
一般的な症状として:
- めまいの持続時間は数秒から1分程度と比較的短い
- 朝起きた時やベッドで寝返りを打った時に特に症状が出やすい
- 耳鳴りや難聴は通常伴わない
- 頭位変換後に一時的な吐き気を感じることがある
BPPVの特徴は、自然軽快することが多く、適切な「耳石置換法(エプリー法など)」というリハビリ的な治療で症状が改善することです。
2.2 メニエール病 原因と特徴
メニエール病は内耳の「内リンパ液」という液体が過剰に溜まる「内リンパ水腫」を引き起こし、めまいが発生します。20〜50代の方に多く、女性にやや多い傾向があります。
回転性のめまいに加えて、耳鳴り・難聴・耳閉感という三大症状を伴うことが特徴です。発作的に症状が現れ、数十分から数時間続くことがあります。
症状 | 特徴 |
---|---|
めまい | 発作的な激しい回転性めまい(数十分〜数時間持続) |
耳鳴り | 低音域のゴーッという耳鳴り(片耳に発生) |
難聴 | 変動する聴力低下(特に低音域) |
耳閉感 | 耳が詰まった感じ |
メニエール病の特徴として、ストレスや疲労、気圧の変化、塩分の過剰摂取などが発作の誘因となることがあります。初期は一側性(片方の耳のみ)ですが、長期間経過すると両側性になることもあります。
治療には安静、水分・塩分摂取のコントロール、ストレス管理などの生活習慣の改善や、薬物療法などがあります。
2.3 前庭神経炎 原因と特徴
前庭神経炎は、平衡感覚を脳に伝える「前庭神経」に炎症が起きる病気です。ウイルス感染が主な原因と考えられています。
突然発症する強烈な回転性めまいが特徴で、数日間持続する点がほかのめまいと異なります。
主な症状:
- 数日間続く強い回転性めまい(BPPVやメニエール病より長い)
- 重度の吐き気・嘔吐を伴うことが多い
- 体を動かすとめまいが悪化する
- 難聴や耳鳴りは通常伴わない(これが突発性難聴との違い)
- 水平性の眼振(眼球が勝手に動く)が見られる
前庭神経炎はめまいの症状が非常に強く、数日間は日常生活が困難になるほどですが、数週間から数ヶ月かけて徐々に改善していくことが一般的です。発症初期には抗めまい薬、ステロイド薬などで症状を抑え、その後は前庭リハビリテーションと呼ばれる特殊な運動療法で平衡機能の回復を促します。
2.4 突発性難聴に伴うめまい 原因と特徴
突発性難聴は、明確な原因なく突然発症する感音性難聴で、約30〜40%の患者さんにめまいを伴います。
突然の難聴と同時に、または前後してめまいが生じるのが特徴です。めまいを伴う突発性難聴は、めまいがない場合に比べて予後が悪いとされています。
主な特徴:
- 朝起きたら突然聞こえなくなっていることが多い
- 片耳の聴力が急激に低下する(数時間から1〜2日で悪化)
- 耳鳴りを伴うことが多い
- めまいは回転性のことが多いが、浮動性のこともある
- 耳の閉塞感や自声強調(自分の声が響いて聞こえる)がみられることも
突発性難聴は発症から治療開始までの時間が重要で、早期(できれば1週間以内)の治療開始が聴力回復の鍵となります。めまいについては、通常1〜2週間程度で改善することが多いですが、難聴の回復には数ヶ月かかる場合もあります。
その他、回転性めまいを引き起こす可能性のある耳の疾患には、以下のようなものがあります:
疾患名 | 特徴 |
---|---|
外リンパ瘻 | 内耳の液体が漏れ出す状態。強い鼻かみや重い物の持ち上げなどで誘発されることがある |
聴神経腫瘍 | 徐々に進行する一側性の難聴とめまい。通常は浮動性めまいだが、回転性のこともある |
耳性帯状疱疹 | ヘルペスウイルスによる耳の感染症。めまい、難聴に加え、耳の痛みや顔面神経麻痺を伴う |
回転性めまいを感じた場合、それが耳の病気によるものか他の原因によるものかを正確に判断するためには、症状の特徴(持続時間、随伴症状など)を詳しく観察することが重要です。特に、めまいに加えて耳鳴りや難聴、耳の違和感などの耳の症状を伴う場合は、耳の病気の可能性が高いと考えられます。
回転性めまいは日常生活に大きな支障をきたすことがありますが、適切な診断と治療により、多くの場合改善が期待できます。特に、めまいが長時間続く、繰り返し発生する、随伴症状がある場合には、早めに専門的な診察を受けることをおすすめします。
3. 浮動性めまいの主な原因 脳や全身の不調

ふわふわと体が浮いたような感覚の浮動性めまいは、脳の問題や全身の不調が原因となっていることが少なくありません。特に脳が関係するめまいは早期発見・早期治療が重要です。ここでは浮動性めまいの主な原因と症状の特徴を詳しく解説します。
3.1 注意が必要な脳が原因のめまい
浮動性めまいの中には、脳の重大な病気が隠れている場合があります。以下の症状が伴う場合は特に注意が必要です。
3.1.1 脳梗塞や脳出血の可能性
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害では、めまいが重要な初期症状として現れることがあります。特に小脳や脳幹部の血管障害では、浮動性のめまいが特徴的です。
脳梗塞・脳出血によるめまいの特徴的な症状としては、めまい以外に以下のような症状が一緒に現れることが多いです:
- 突然の激しいめまい
- 手足のしびれや麻痺
- 言葉がうまく話せない(構音障害)
- ろれつが回らない
- 視力障害(物が二重に見える、視野が欠ける)
- 激しい頭痛
- 吐き気や嘔吐
- バランスを保つことが難しい
これらの症状がめまいと一緒に現れた場合は、緊急性が高いため速やかに受診が必要です。特に高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙習慣のある方は脳血管障害のリスクが高いため注意が必要です。
3.1.2 椎骨脳底動脈循環不全
脳の後ろ側(後頭部側)に血液を送る椎骨脳底動脈系の血流が一時的に低下すると、浮動性のめまいが生じることがあります。これを椎骨脳底動脈循環不全と呼びます。
椎骨脳底動脈循環不全の特徴:
- 首を回したり、上を向いたりする動作でめまいが誘発される
- 数分から数十分程度続くめまい発作
- 後頭部痛を伴うことがある
- 耳鳴りや難聴が一時的に生じることもある
- 吐き気や嘔吐を伴うことがある
- ふらつきや歩行困難
この症状は動脈硬化が進んでいる高齢者に多く見られます。首の骨(頸椎)の変形により血管が圧迫されることでも起こり得ます。一過性脳虚血発作(TIA)の一種であり、将来的な脳梗塞のリスク因子となるため、適切な検査と治療が必要です。
3.1.3 聴神経腫瘍
聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)は、内耳から脳へ信号を伝える神経に発生する良性の腫瘍です。徐々に大きくなることで、めまいや聴力低下などの症状を引き起こします。
聴神経腫瘍によるめまいの特徴:
- 徐々に進行する一側の難聴(片側の耳が聞こえにくくなる)
- 持続的な浮動感やふらつき
- 片側の耳鳴り
- 顔面のしびれや麻痺(腫瘍が大きくなった場合)
- バランス障害
聴神経腫瘍は通常、ゆっくりと成長するため、症状も数か月から数年かけて徐々に進行します。片側の難聴と耳鳴りが特徴的な初期症状として現れることが多く、めまいの程度は様々です。MRIなどの画像検査で診断され、サイズや症状に応じて経過観察や手術などの治療法が選択されます。
3.2 ストレスや全身の病気が原因のめまい
浮動性めまいは脳血管の問題だけでなく、全身の状態やストレスなどの心理的要因によっても引き起こされることがあります。
3.2.1 自律神経の乱れによるめまい
自律神経は、呼吸や心拍、血圧調整など体の基本的な機能を無意識のうちにコントロールしています。この自律神経のバランスが崩れると、浮動性のめまいを感じることがあります。
自律神経失調症によるめまいの特徴:
- 朝起きた時や長時間立っているときに感じるふわふわ感
- 頭が重く感じる
- 疲れやすい
- 集中力の低下
- 不眠や寝付きの悪さ
- 動悸やのぼせ
- 胃腸の不調(胃もたれ、下痢、便秘など)
- 肩こりや頭痛
自律神経の乱れは、過度のストレス、不規則な生活習慣、睡眠不足、運動不足など様々な要因で起こります。規則正しい生活習慣の確立、適度な運動、ストレス管理などが改善に効果的です。
自律神経を整える生活習慣 | 具体的な取り組み方 |
---|---|
規則正しい睡眠 | 毎日同じ時間に起床・就寝する |
適度な運動 | ウォーキングなど無理のない有酸素運動を20~30分/日 |
バランスの良い食事 | 三食規則正しく、野菜を多く摂取する |
ストレス発散 | 趣味の時間を持つ、深呼吸や軽いストレッチをする |
入浴 | ぬるめのお湯(38~40℃)にゆっくりつかる |
3.2.2 更年期障害に伴うめまい
女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少により起こる更年期障害では、めまいは頻繁に現れる症状の一つです。通常40代後半から50代の女性に多く見られますが、男性の更年期障害でもめまいが生じることがあります。
更年期障害によるめまいの特徴:
- ふわふわとした浮遊感
- ホットフラッシュ(顔や上半身の急な熱感とほてり)
- 発汗
- 動悸
- 頭痛
- 不眠
- イライラや不安感
- 疲労感
更年期障害によるめまいは、ホルモンバランスの変化が自律神経に影響を与えることで生じます。症状が日常生活に支障をきたす場合は、ホルモン補充療法などの治療法も検討できます。また、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理なども症状改善に役立ちます。
3.2.3 不安やうつなど心の不調
精神的なストレスや不安、うつ状態などの心の不調も、浮動性めまいの原因となることがあります。特にパニック障害や全般性不安障害などの不安障害では、めまいが主要な症状として現れることがあります。
心理的要因によるめまいの特徴:
- 不安や緊張を感じる場面でめまいが強くなる
- ふわふわした感覚が長期間(数週間から数か月)続く
- 「倒れるのではないか」「コントロールを失うのではないか」という強い不安
- 動悸や息切れ
- 発汗や手の震え
- 緊張した場面や人混みでめまいが悪化する
- 検査では異常が見つからないことが多い
心理的要因によるめまいは、一般的な検査では異常が見つからないことが多く、「異常なし」と言われることでさらに不安が強まる悪循環に陥ることがあります。認知行動療法やリラクセーション法、必要に応じた薬物療法などが効果的です。
3.2.4 薬の副作用によるめまい
様々な薬の副作用としてめまいが生じることがあります。特に血圧を下げる薬、精神安定剤、抗うつ剤、抗けいれん薬などはめまいの副作用が比較的多く報告されています。
めまいを引き起こしやすい主な薬剤:
薬剤の種類 | 主な薬剤例 | めまいのメカニズム |
---|---|---|
降圧剤 | カルシウム拮抗薬、β遮断薬、利尿剤など | 血圧低下による脳血流の一時的減少 |
抗不安薬・睡眠薬 | ベンゾジアゼピン系薬剤など | 中枢神経抑制作用 |
抗うつ薬 | SSRI、三環系抗うつ薬など | セロトニン作用や抗コリン作用 |
抗てんかん薬 | カルバマゼピン、バルプロ酸など | 中枢神経への作用 |
抗ヒスタミン薬 | 第一世代抗ヒスタミン薬など | 前庭系への影響 |
抗生物質 | アミノグリコシド系など | 耳毒性による内耳障害 |
薬の副作用によるめまいが疑われる場合は、自己判断で服薬を中止せず、必ず処方した専門家に相談してください。薬の種類や用量の調整により、めまいの症状が改善することがあります。
また、複数の薬を服用している場合は、薬の相互作用によってもめまいが生じることがあります。特に高齢者は複数の薬を服用していることが多く、副作用としてのめまいに注意が必要です。
浮動性めまいの原因は多岐にわたり、症状がいつ・どのような状況で起こるかによって原因を推測できることがあります。特に、突然の強いめまいや、他の神経症状を伴うめまいの場合は、重大な疾患の可能性があるため早急に専門的な検査を受けることが重要です。また、慢性的なめまいでも生活の質を著しく低下させることがあるため、適切な対応を心がけましょう。
4. 立ちくらみのようなめまいの主な原因 血圧や貧血
急に立ち上がった時や長時間同じ姿勢でいた後に感じる「クラッ」としためまいは、立ちくらみに代表される症状です。この種のめまいは、一時的な脳への血流低下によって引き起こされることが多く、日常生活でもよく経験する症状です。
立ちくらみタイプのめまいは、瞬間的に起こり、短時間で回復することが特徴です。しかし、頻繁に起こる場合や症状が重い場合は、身体からの重要なサインかもしれません。
4.1 血圧の変動が原因となるめまい
血圧の急激な変化は、脳への血流量に直接影響し、めまいを引き起こす主要な原因となります。特に以下の状態は注意が必要です。
4.1.1 起立性低血圧
起立性低血圧は、横になった状態や座った状態から急に立ち上がった時に血圧が一時的に低下し、脳への血流が減少することで起こるめまいです。
起立性低血圧によるめまいの特徴として、立ち上がった直後にクラッとする感覚、一時的な視界のかすみ、軽い頭のふらつきが挙げられます。場合によっては、冷や汗や顔面蒼白、ひどい場合は失神することもあります。
この症状が出やすい人には以下のような特徴があります:
- 高齢者
- 血圧の薬を服用している方
- 糖尿病や神経系の疾患がある方
- 脱水状態の方
- 長時間同じ姿勢でいた後
起立性低血圧への対策としては、急に立ち上がらずにゆっくりと体勢を変えること、水分をこまめに摂取すること、必要に応じて塩分摂取を適切に行うことが重要です。また、筋力トレーニングによって下半身の筋力を強化することも効果的です。
起立性低血圧対策 | 具体的な方法 |
---|---|
起き上がり方の工夫 | ベッドから起き上がる際はまず座位をとり、足を床につけてから徐々に立ち上がる |
水分摂取 | 1日1.5~2リットルの水分を目安に、特に朝起きた直後に1杯の水を飲む |
食事の工夫 | 大量の食事を一度に摂らず、少量ずつ分けて食べる |
弾性ストッキング | 下肢の血液が心臓に戻りやすくなる弾性ストッキングの着用 |
4.1.2 高血圧
高血圧自体はめまいの直接的な原因になりにくいとされていますが、血圧の急激な上昇(高血圧クリーゼ)や、高血圧の薬による血圧の急激な低下がめまいを引き起こすことがあります。
高血圧に関連するめまいでは、頭痛や肩こり、耳鳴りを伴うことが特徴的です。また、朝方に後頭部の重さや痛みとともにめまいを感じる場合は、高血圧の可能性を疑ってみるべきでしょう。
高血圧が原因のめまいを予防するためには、以下の対策が有効です:
- 減塩と野菜中心のバランスの良い食事
- 適度な運動習慣の確立
- ストレス管理
- 禁煙と節酒
- 適正体重の維持
- 処方された降圧薬の規則正しい服用
高血圧の管理が適切に行われていないと、長期的には脳卒中や心疾患などの重大な合併症のリスクが高まるため、定期的な血圧測定と健康管理が重要です。
4.2 その他の原因
立ちくらみタイプのめまいには、血圧変動以外にも様々な原因があります。特に以下の状態は日常生活でも比較的よく見られる原因です。
4.2.1 貧血によるめまい
貧血は、体内の赤血球数や血色素(ヘモグロビン)量が減少し、全身に十分な酸素を運べなくなる状態です。これにより脳への酸素供給が不足し、めまいが起こります。
貧血によるめまいの特徴は、急に立ち上がった時や体勢を変えた時に視界が暗くなる、耳鳴りがする、疲れやすい、息切れがするなどの症状を伴うことです。特に女性は月経による鉄分喪失から鉄欠乏性貧血になりやすいため注意が必要です。
貧血の種類と主な原因:
貧血の種類 | 主な原因 | よく見られる症状 |
---|---|---|
鉄欠乏性貧血 | 鉄分摂取不足、月経過多、消化管出血 | 疲労感、爪の変形、めまい |
巨赤芽球性貧血 | ビタミンB12や葉酸の不足 | 舌の痛み、神経症状、めまい |
溶血性貧血 | 赤血球の早期破壊 | 黄疸、疲労感、めまい |
再生不良性貧血 | 骨髄機能不全 | 感染症にかかりやすい、出血しやすい、めまい |
貧血改善のためには、原因に応じた対策が必要です。鉄欠乏性貧血の場合は、鉄分を多く含む食品(レバー、赤身肉、ほうれん草、小松菜など)の摂取や、必要に応じて鉄剤の服用が有効です。また、鉄分の吸収を助けるビタミンCを同時に摂ることも重要です。
慢性的な貧血がある場合は、根本的な原因を特定するための検査が必要なこともあります。特に原因不明の貧血が続く場合は、消化管出血や慢性疾患の可能性も考慮する必要があります。
4.2.2 不整脈によるめまい
心臓のリズムが乱れる不整脈は、脳への血流を一時的に減少させ、めまいを引き起こすことがあります。特に重度の不整脈では、脳への血液供給が著しく低下し、強いめまいや失神を起こすことも。
不整脈によるめまいの特徴は、動悸や息切れを伴うことが多く、胸部の不快感や違和感、脈の乱れなどの症状と同時に起こることです。また、めまいが突然始まり、突然終わるという特徴もあります。
特に注意が必要な不整脈とめまいの関係:
- 心房細動:不規則な心拍が続き、めまいや倦怠感を引き起こす
- 発作性上室性頻拍:突然心拍数が増加し、めまいや胸部不快感を伴う
- 徐脈性不整脈:心拍数が極端に遅くなり、めまいや失神の原因となる
- 心室性不整脈:重度の場合、心停止のリスクもあり危険
不整脈が疑われる場合は、脈拍の確認や心電図検査などで診断を受けることが重要です。特に高齢者や心疾患の既往がある方は、めまいと不整脈の関連に注意すべきです。
日常生活での不整脈予防としては、以下の点に気をつけることが推奨されます:
- カフェインやアルコールの過剰摂取を避ける
- 十分な睡眠とストレス管理
- バランスの取れた食事と適切な水分摂取
- 定期的な運動(ただし過度な運動は避ける)
- 喫煙を避ける
立ちくらみのようなめまいは、一見すると軽微な症状に思えますが、背後に様々な健康上の問題が隠れていることがあります。特に症状が頻繁に起こる場合や、他の気になる症状を伴う場合は、適切な対応が必要です。
また、めまいが起きた時の安全確保も重要です。めまいを感じたら、すぐに座るか横になり、危険な行動(運転、高所での作業など)は避けましょう。症状が改善しない場合や、繰り返し起こる場合は、根本的な原因を特定するための専門的な評価が必要です。
5. めまいが起きたらどうする 応急処置と対処法
めまいは突然襲ってくるものです。特に強いめまいの場合、パニックになってしまうことも少なくありません。ここでは、めまいが起きた際の適切な対応方法と応急処置について解説します。正しい対処法を知っておくことで、めまいの悪化を防ぎ、安全に過ごすことができます。
5.1 まずは安静に 安全な場所へ
めまいを感じたら、最も重要なのは転倒などの二次的な事故を防ぐことです。以下の手順で対応しましょう。
- 急に動かず、その場で動作を止める
- 近くに椅子やソファがあれば、ゆっくりと座る
- 階段や高所にいる場合は、手すりにつかまるなどして安全を確保する
- 運転中の場合は、すぐに安全な場所に車を停めて休む
めまいの多くは突然発症し、予測できないことがほとんどです。特に回転性のめまいは強く、立っていられなくなることもあります。そのような状況で無理に動こうとすると転倒し、打撲や骨折などの二次的なケガにつながる恐れがあります。
周囲に人がいる場合は、「めまいがする」と伝え、サポートを求めましょう。一人でいる場合は、壁や手すりなどにつかまりながら、安全な場所へ移動することが大切です。
5.2 楽な姿勢で様子を見る
安全な場所に移動できたら、めまいを軽減させるために楽な姿勢をとりましょう。めまいのタイプによって、効果的な姿勢が異なります。
めまいのタイプ | 推奨される姿勢 | ポイント |
---|---|---|
回転性めまい | 横になる(頭を少し高くする) | 目を閉じて、頭を動かさないようにする |
浮動性めまい | 座るか横になる | 体を安定させ、リラックスする |
立ちくらみ | 座る(前かがみの姿勢) | 足を少し高くして血流を改善する |
特に回転性めまいの場合、頭の位置を変えるとめまいが悪化することがあります。動きを最小限にして、めまいが落ち着くのを待ちましょう。
また、めまいに吐き気を伴う場合は、横向きに寝ることで嘔吐した際の誤嚥を防ぐことができます。めまいが強い場合は無理に起き上がらず、十分に休息を取ることが大切です。
5.3 めまいを悪化させないために
めまいを感じている時は、症状を悪化させないための注意点があります。以下のポイントを意識しましょう。
- 急な姿勢変換を避ける(特に寝起きや立ち上がり時)
- 水分を少しずつ摂取する(特に脱水状態の場合)
- 強い光や騒音を避け、刺激の少ない環境で休む
- 息を整えてリラックスし、パニックにならないよう意識する
- めまいが落ち着くまで、スマートフォンやパソコンなど画面の凝視を避ける
回転性めまいの一種である良性発作性頭位めまい症(BPPV)の場合、特定の頭の位置でめまいが悪化します。このタイプのめまいを経験したことがある方は、過去にめまいが誘発された頭の位置を避けるようにしましょう。
リラックスすることもめまいの緩和に効果的です。めまいが起きると不安になりますが、緊張や不安はめまいを悪化させることがあります。深呼吸をしながら、体の力を抜いていきましょう。
5.3.1 めまい対応のための携帯品
めまいを繰り返し経験する方は、外出時に以下のものを携帯しておくと安心です。
- 水分(ミネラルウォーターなど)
- 塩分補給用のタブレット(夏場の脱水対策)
- 持病がある場合は処方薬
- 緊急連絡先を記したメモやカード
- 簡易的に座れるポータブルイス(長時間の外出時)
めまいの症状が繰り返し起こる場合は、日常生活での備えも大切です。特に一人暮らしの方は、緊急時に連絡がとれるよう、スマートフォンを常に手の届く場所に置いておくことをおすすめします。
5.3.2 めまいに有効なツボ押し
軽度のめまいの場合、東洋医学で用いられるツボ押しが症状緩和に役立つことがあります。
- 百会(ひゃくえ):頭頂部の中心にあるツボで、めまいや頭痛の緩和に効果があるとされています。
- 内関(ないかん):手首の内側、中指の延長線上にあるツボで、吐き気を伴うめまいに効果的です。
- 合谷(ごうこく):親指と人差し指の付け根の間にあるツボで、頭部の血行を促進します。
ただし、ツボ押しはあくまで補助的な方法です。強いめまいや、他の症状を伴う場合は自己判断せず、適切な医療機関を受診しましょう。
5.3.3 回復期の過ごし方
めまいが落ち着いてきた回復期には、以下のポイントに注意して過ごしましょう。
- 徐々に活動レベルを上げる(無理せず段階的に)
- 十分な睡眠と休息を確保する
- バランスの良い食事と水分摂取を心がける
- ストレスを減らし、リラックスする時間を作る
- めまいの再発に備え、日記などに症状や状況を記録しておく
めまいは体からのシグナルでもあります。無理をせず、体調の変化に注意しながら日常生活に戻ることが大切です。特に重度のめまいを経験した後は、完全に回復したと感じるまでは慎重に行動しましょう。
めまいの原因によっては、再発を防ぐための特定の対策や生活習慣の改善が必要な場合もあります。繰り返しめまいが起こる場合は、専門家に相談し、適切な対策を行うことをおすすめします。
6. こんなめまいは危険 すぐに病院へ行くべき症状
めまいの多くは一時的なものですが、中には緊急性の高い重篤な疾患を示すサインの場合もあります。以下の症状が見られる場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診しましょう。
6.1 激しい頭痛や吐き気を伴うめまい
突然の強い頭痛とめまいが同時に起こる場合は、脳内の重大な問題を示している可能性があります。特に今までに経験したことのないような激しい頭痛(雷が落ちたような、または頭を殴られたような衝撃的な痛み)を伴うめまいは注意が必要です。
このような症状が見られる場合、以下の疾患の可能性があります:
- くも膜下出血
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 脳髄膜炎
特に「今まで経験したことのない最悪の頭痛」と表現されるような痛みを伴うめまいは、くも膜下出血の可能性があり、緊急の治療が必要です。吐き気や嘔吐を伴うことも多く、これらの症状が見られたら救急車を呼ぶべきです。
6.2 ろれつが回らない 手足のしびれがある
めまいと共に、言葉が明瞭に話せない(構音障害)、片側の手足にしびれや脱力感がある、顔の片側が下がるといった症状がある場合は、脳梗塞の可能性が高いです。
脳梗塞の初期症状としては、以下のような症状が現れることがあります:
症状の分類 | 具体的な症状 |
---|---|
運動障害 | 片側の手足の脱力感、麻痺、動かしにくさ |
感覚障害 | 片側の手足や顔のしびれ、感覚の鈍さ |
言語障害 | 言葉が出てこない、滑舌が悪い、他人の言葉が理解できない |
視覚障害 | 片方の目が見えない、視野の一部が欠ける |
平衡障害 | ふらつき、めまい、まっすぐ歩けない |
これらの症状は「FAST」という略語で覚えることができます:
- Face(顔):笑ってもらった時に顔の片側が下がる
- Arm(腕):両腕を挙げてもらった時に片方が下がる
- Speech(言葉):ろれつが回らない、言葉が出ない
- Time(時間):これらの症状があれば時間との勝負
脳梗塞は発症から治療開始までの時間が予後を大きく左右します。発症から4.5時間以内に治療を開始できれば、血栓溶解療法が適用できる可能性があります。一刻も早く救急搬送が必要な状態です。
6.3 意識が遠のく 失神する
めまいに伴って意識が薄れる、もうろうとする、または実際に失神する場合は、心臓や血管系の重大な問題が潜んでいる可能性があります。
特に以下のような場合は緊急性が高いと考えられます:
- めまいと共に胸痛や息切れがある
- 激しい動悸や不整脈を感じる
- 立っていられないほどのめまいで倒れそうになる
- 実際に意識を失った(失神した)
これらの症状の背景には、以下のような深刻な疾患が潜んでいる可能性があります:
疾患名 | 特徴的な症状 |
---|---|
重度の不整脈 | 動悸、胸部不快感、息切れ、突然の失神 |
心筋梗塞 | 胸痛、冷や汗、吐き気、左腕の痛み |
大動脈解離 | 突然の激しい胸痛や背部痛、冷や汗 |
肺塞栓症 | 突然の息切れ、胸痛、動悸 |
重度の脱水や出血 | 脱力感、冷や汗、口渇、立ちくらみ |
特に失神を伴うめまいは一過性でも軽視せず、必ず医療機関を受診するべきです。心疾患などが原因の場合、次に起こる発作では命に関わる可能性があります。
6.4 経験したことのない強いめまい
突然発症した激しいめまいで、以下のような特徴がある場合は要注意です:
- 立っていられないほどの強いめまい
- 数時間以上続く持続的なめまい
- 耳鳴りや難聴を伴うめまい
- 発熱を伴うめまい
- 頭部打撲後に生じためまい
特に突発性難聴に伴うめまいは72時間以内の治療開始が聴力回復の鍵となります。片側の耳が突然聞こえづらくなり、それに伴ってめまいがある場合は、耳鼻咽喉科の救急外来を受診すべきです。
また、頭部外傷後のめまいは脳震盪や硬膜下血腫などの可能性があります。特に以下の場合は危険信号です:
危険な状況 | 考えられる疾患 |
---|---|
頭部打撲後、一度は意識清明だったが、その後眠気やめまいが出現 | 急性硬膜下血腫、遅発性脳出血 |
頭部打撲後、めまいと共に記憶障害や集中力低下 | 脳震盪、脳挫傷 |
発熱、頭痛、項部硬直(首の硬さ)を伴うめまい | 髄膜炎、脳炎 |
高齢者や基礎疾患のある方は、めまいの症状が軽く見えても重大な疾患が潜んでいる可能性が高いため、特に注意が必要です。
6.5 小児や高齢者のめまいに特に注意すべき点
小児や高齢者のめまいは、症状の訴え方が不明確だったり、複数の要因が絡み合っていたりするため、特別な配慮が必要です。
6.5.1 小児のめまいで注意すべき点
小さな子どもは「めまい」という感覚を正確に表現できないことがあります。以下のような行動が見られた場合は、めまいの可能性があります:
- 突然バランスを崩す
- 「部屋がグルグル回る」と訴える
- 嘔吐を繰り返す
- 顔色が悪く、ぐったりしている
特に小児の場合、以下の症状を伴うめまいは緊急性が高いと考えられます:
- 高熱を伴うめまい(髄膜炎や脳炎の可能性)
- 頭部打撲後のめまい
- 意識レベルの変化(呼びかけに対する反応が鈍い)
- けいれんを伴うめまい
6.5.2 高齢者のめまいで注意すべき点
高齢者は複数の慢性疾患を持っていることが多く、めまいの原因が複合的なことがあります。また、加齢による平衡感覚の低下も影響します。
高齢者で特に注意すべきめまいの状況:
- 服用中の薬が変更された後に生じためまい(薬剤性めまいの可能性)
- 転倒リスクが高まっている状態のめまい
- 認知機能の急な変化を伴うめまい
- 食事や水分摂取が不十分な状態でのめまい(脱水の可能性)
高齢者のめまいは転倒につながりやすく、骨折などの重大な事故を引き起こす可能性があります。めまいを感じたら無理をせず、安全な場所で休み、必要に応じて介助を求めましょう。
6.6 めまいを我慢してはいけない状況
以下の状況では、めまいを我慢せず、速やかに医療機関を受診することが重要です:
状況 | 考えられるリスク |
---|---|
妊娠中のめまい(特に高血圧を伴う場合) | 妊娠高血圧症候群、子癇前症の可能性 |
糖尿病患者の突然のめまい | 低血糖や高血糖、自律神経障害の可能性 |
高血圧治療中の方の急なめまい | 過度の血圧低下や逆に血圧上昇の可能性 |
抗凝固薬を服用中の方のめまい | 出血性疾患の可能性 |
特に基礎疾患をお持ちの方は、一見軽いめまいでも背景に重大な病態が隠れている可能性があります。普段と違う症状を感じたら、かかりつけの医療機関に相談しましょう。
6.7 救急車を呼ぶべきめまいの状況
以下の状況では、自家用車や公共交通機関での移動は危険です。躊躇せず救急車を呼びましょう:
- 意識障害(反応が鈍い、呼びかけに応じない)を伴うめまい
- 激しい頭痛とめまいが同時に起きている
- 顔や手足の麻痺、言語障害を伴うめまい
- 突然の視力障害(視野の欠損、複視など)を伴うめまい
- 歩行不能なほどの激しいめまい
- 胸痛や息切れを伴うめまい
- 失神を伴うめまい
これらの症状は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、心筋梗塞、重度の不整脈などの生命を脅かす疾患のサインである可能性があります。「様子を見よう」と判断を先延ばしにすると、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。
救急車を呼ぶ際は、めまいがいつから始まったか、どのような状況で発生したか、他にどのような症状があるかなど、できるだけ詳しく状況を説明しましょう。また、普段服用している薬があれば、そのリストや薬そのものを病院に持っていくことも重要です。
7. めまいの原因を特定するために 病院での検査と診療科

めまいの症状が続いたり、繰り返し起こる場合は、専門的な検査で原因を特定することが重要です。めまいの種類や随伴症状によって受診すべき診療科や行われる検査が異なります。ここでは、めまいの原因を特定するための診療科選びと代表的な検査について解説します。
7.1 めまいで受診すべき診療科 耳鼻咽喉科 神経内科 内科
めまいの症状があるとき、どの診療科を受診すべきか迷うことがあります。めまいの性質や伴う症状によって、適切な診療科が異なります。
診療科 | 受診の目安となる症状 | 主に診断・治療する疾患 |
---|---|---|
耳鼻咽喉科 |
|
|
神経内科 |
|
|
内科 |
|
|
初めてめまいを経験する場合や、原因がはっきりしない場合は、まず総合内科や一般内科を受診し、必要に応じて専門科を紹介してもらうのが良いでしょう。救急を要する強いめまいの場合は、救急外来を受診してください。
7.2 めまいの原因を調べるための主な検査
めまいの原因を特定するためには、様々な検査が行われます。症状の特徴によって、必要な検査が選択されます。
7.2.1 問診と神経学的検査
めまいの診断で最も重要なのが問診です。めまいの性質(回転性・浮動性・立ちくらみ)、発症状況、持続時間、繰り返しの有無、随伴症状(耳鳴り・頭痛・吐き気など)を詳しく聞かれます。
神経学的検査では、眼球運動、歩行状態、バランス感覚、協調運動などをチェックします。特にめまい患者では眼振(目が勝手に動く現象)の有無や性質が診断の重要な手がかりとなります。
7.2.2 耳鼻科での平衡機能検査
耳鼻咽喉科では、内耳の機能を評価するための平衡機能検査が行われます。
検査名 | 検査内容 | わかること |
---|---|---|
頭位・頭位変換検査 | 頭の位置を変えながら眼振を観察 | 良性発作性頭位めまい症(BPPV)の診断 |
電気眼振図検査(ENG) | 電極で眼球運動を記録 | 内耳前庭機能の左右差 |
温度刺激検査(カロリックテスト) | 外耳道に冷水や温水を注入して眼振を観察 | 半規管の機能評価 |
重心動揺検査 | 専用の台に立ち、身体の揺れを測定 | バランス機能の評価 |
ビデオ眼振検査(VOG) | 特殊なカメラで眼球運動を記録 | 微細な眼振の検出 |
これらの検査に加えて、聴力検査も実施されることが多く、特に難聴や耳鳴りを伴うめまいの場合は、純音聴力検査やティンパノメトリー検査が重要な診断情報となります。
7.2.3 画像検査
特に脳や血管が原因と疑われるめまいの場合、以下のような画像検査が行われます。
- 頭部CT検査:短時間で脳出血や大きな脳梗塞を確認できます。緊急時に行われることが多い検査です。
- 頭部MRI検査:小さな脳梗塞や脳腫瘍、多発性硬化症などの診断に有効です。特に小脳や脳幹部の微細な変化を捉えることができるため、めまいの原因特定に重要な検査です。
- MRA(MR血管撮影):脳の血管の状態を調べる検査で、動脈硬化や動脈瘤などを発見できます。
- 頸部血管エコー:首の血管の状態を超音波で観察し、動脈硬化の程度や血流の状態を評価します。
7.2.4 血液検査・循環器系検査
全身状態を評価するために、以下のような検査が実施されることがあります。
- 血液検査:貧血、炎症、電解質異常、甲状腺機能、血糖値などを調べます。
- 心電図:不整脈によるめまいの可能性を調べます。
- ホルター心電図:24時間心電図を記録し、発作的な不整脈を捉えます。
- 起立試験:横になった状態から立ち上がり、血圧の変化を測定して起立性低血圧の有無を調べます。
特に高齢者や立ちくらみタイプのめまいでは、血圧測定を臥位(寝た状態)と立位(立った状態)の両方で行うことが診断の鍵となることがあります。
7.2.5 専門的な平衡機能検査
難治性のめまいや特殊なケースでは、さらに詳細な平衡機能検査が実施されることがあります。
- 前庭誘発筋電位検査(VEMP):音刺激に対する筋肉の反応を測定し、耳石器官の機能を評価します。
- 電気刺激検査(GVS):電気刺激によって前庭機能を評価します。
- 三次元眼球運動検査:特殊な装置で詳細な眼球運動を記録分析します。
これらの専門的検査は大学病院や専門施設で実施されることが多く、通常のめまい診療では必ずしも必要ではありません。
7.2.6 自律神経機能検査
自律神経が関与するめまいの場合、以下のような検査が行われることがあります。
- 心拍変動解析:心電図から自律神経の働きを評価します。
- 発汗試験:自律神経による発汗反応を測定します。
- 瞳孔反応検査:光に対する瞳孔の反応を調べます。
自律神経の乱れによるめまいは検査で異常が見つかりにくいことが特徴で、他の検査で異常がなく、ストレスや生活習慣の乱れがある場合に診断されることが多いです。
めまいの原因を特定するためには、これらの検査を組み合わせて総合的に判断することが重要です。検査結果だけでなく、症状の特徴や経過も重要な診断情報となります。検査で異常が見つからない場合でも、症状が持続したり悪化したりする場合は、再検査や別の診療科への紹介が必要になることもあります。
8. 自分でできる めまいの予防と対策 日常生活での注意点

めまいの症状を予防したり、軽減したりするためには、日常生活での対策が重要です。特に原因が特定できないめまいや、慢性的に繰り返すめまいの場合は、生活習慣の見直しで症状が改善することも少なくありません。ここでは自分でできるめまい対策を詳しく解説します。
8.1 生活習慣を見直してめまいを予防
めまいの予防には、バランスの取れた規則正しい生活が基本となります。特に次のポイントに注意しましょう。
急な体勢変化は、めまいを誘発しやすくなります。特に朝起きるときは、いきなり起き上がるのではなく、まずは横向きになってから、ゆっくりと体を起こすようにしましょう。同様に、長時間座っていた後に立ち上がる際も、一度浅く腰掛けてから立ち上がるなど、段階的な動作を心がけます。
また、生活リズムを整えることも重要です。不規則な生活は自律神経の乱れを招き、めまいの原因になることがあります。起床時間や就寝時間、食事の時間をできるだけ一定にし、体内時計を整えましょう。
水分摂取も忘れてはいけません。脱水状態はめまいを引き起こす要因となります。特に起床時や入浴前後、運動時には意識的に水分を補給することが大切です。ただし、カフェインを含む飲み物の摂りすぎは、かえって体調を崩す原因となるので注意が必要です。
タバコやアルコールの過剰摂取も、めまいの誘因となります。特にアルコールは内耳リンパ液の組成に影響を与え、めまいを悪化させることがあるため、適量を心がけましょう。
8.2 ストレスを溜めない工夫と良質な睡眠
ストレスはめまいの大きな要因の一つです。特に自律神経性めまいや心因性めまいの場合、ストレスマネジメントが症状改善の鍵となります。
ストレス解消法は人それぞれですが、呼吸法や軽いストレッチ、趣味の時間を持つなど、自分に合った方法を見つけることが大切です。深呼吸を意識的に行うだけでも、自律神経のバランスを整える効果があります。
質の良い睡眠もめまい予防には欠かせません。不眠や睡眠不足は自律神経の乱れを招き、めまいの原因となります。就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控え、部屋の照明を暗めにするなど、睡眠環境を整えましょう。
睡眠の質を高めるために、就寝前のリラックスタイムを設けることも効果的です。入浴で体を温めたり、ハーブティーを飲んだりして、心身をリラックスさせましょう。寝具や枕も自分に合ったものを選ぶことが大切です。特に頚椎に負担がかからない高さの枕を使用することで、睡眠時の血流が改善され、めまい予防につながります。
8.3 バランスの取れた食事でめまい対策
食生活の乱れはめまいと密接な関係があります。特に次の栄養素に注目した食事を心がけましょう。
栄養素 | 効果 | 含まれる食品 |
---|---|---|
マグネシウム | 血管を拡張し、血流を改善する | ナッツ類、緑黄色野菜、海藻、豆類 |
カリウム | 体内の水分バランスを整える | バナナ、アボカド、じゃがいも、トマト |
鉄分 | 貧血によるめまいを予防 | レバー、赤身肉、ほうれん草、小松菜 |
ビタミンB群 | 神経機能を正常に保つ | 豚肉、うなぎ、玄米、レバー、乳製品 |
ビタミンE | 血行を促進する | ナッツ類、植物油、アボカド、うなぎ |
また、食事の摂り方も重要です。空腹状態が続くと、低血糖状態になりめまいを起こしやすくなります。一日三食を規則正しく、バランスよく摂ることを心がけましょう。
塩分の取りすぎは高血圧の原因となり、めまいを引き起こすことがあります。また、内耳の水分バランスにも影響を与えるため、塩分摂取量にも注意が必要です。一方で、不足しすぎても血圧低下を招くことがあるため、適切な摂取を心がけましょう。
急激な血糖値の上昇と下降を避けるために、精製された糖質や炭水化物の摂りすぎにも注意が必要です。玄米や全粒粉パンなどの食物繊維が豊富な食品を選ぶと、血糖値の急激な変動を防ぐことができます。
8.4 めまい改善に役立つセルフケアと運動
適切な運動は血行を促進し、めまいの予防や改善に効果的です。特に以下の運動がおすすめです。
8.4.1 バランス感覚を鍛える運動
平衡感覚を向上させる運動は、めまい対策として効果的です。例えば、片足立ちや、かかとの上げ下げなど、簡単なバランス運動から始めましょう。初めは壁に手をついて行い、慣れてきたら手を離して行うなど、段階的に難易度を上げていくことが大切です。
ヨガやタイチーなどのゆっくりとした動きを伴う運動も、バランス感覚の向上に役立ちます。特に「木のポーズ」や「戦士のポーズ」などは、初心者でも取り組みやすく、自宅でも実践できます。
8.4.2 首や肩の筋肉をほぐす運動
首や肩の凝りは、血流を悪くしめまいを誘発することがあります。デスクワークが多い方は特に、定期的に首や肩のストレッチを行いましょう。
首を前後左右にゆっくり傾ける、肩を回す、胸を開くストレッチなどが効果的です。ただし、めまいがある時に無理な運動は避け、体調に合わせて行うことが大切です。
8.4.3 有酸素運動で血行促進
ウォーキングや水泳などの有酸素運動は、全身の血行を促進し、めまいの予防に効果的です。特に水中での運動は、水圧が血流を促進し、さらに関節への負担が少ないため、高齢者や運動が苦手な方にもおすすめです。
運動は急に激しく行うのではなく、5分程度の軽いウォーキングから始め、徐々に時間や強度を上げていくことが大切です。運動後のめまいを防ぐためにも、急に動作を止めず、クールダウンの時間を設けましょう。
8.4.4 めまい体操(エプリー法)
特に良性発作性頭位めまい症(BPPV)の方には、「エプリー法」と呼ばれる特殊な体操が効果的です。耳の中の耳石を正しい位置に戻すことを目的としています。
エプリー法は、座った状態から始め、頭を45度回転させて横になり、さらに反対側を向くなどの一連の動作を行います。ただし、自己判断で行うと症状が悪化する場合もあるため、専門家の指導を受けることをおすすめします。
以下のような簡単なセルフケアも日常的に取り入れると効果的です:
- 温冷交互浴:足を温かいお湯に浸してから冷たい水に浸すことを繰り返し、血行を促進する
- 耳のマッサージ:耳たぶや耳の周りを優しくマッサージして血行を良くする
- ツボ押し:「完骨(かんこつ)」「天柱(てんちゅう)」などのめまいに効果的なツボを優しく押す
めまいの原因は様々ですが、日常生活での小さな心がけが症状の予防や改善につながることも多いです。自分の生活習慣を見直し、ストレスケアや適切な栄養摂取、適度な運動を心がけましょう。ただし、めまいが繰り返す場合や、強い症状がある場合は、自己判断せず専門家に相談することが大切です。
9. まとめ
めまいには回転性・浮動性・立ちくらみ型の3つのタイプがあり、それぞれ原因が異なります。耳の疾患が原因となる回転性めまい、脳や全身の不調による浮動性めまい、血圧変動や貧血による立ちくらみ型めまいなど、症状によって受診すべき診療科も変わってきます。激しい頭痛や吐き気、手足のしびれなどを伴うめまいは脳梗塞などの重篤な疾患の可能性があるため、すぐに医療機関を受診しましょう。日常生活では、規則正しい生活習慣の維持、ストレス管理、バランスの良い食事摂取などが予防に効果的です。めまいで不安を感じたら、無理をせず安静にして様子を見て、必要に応じて医師の診察を受けることが大切です。
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参考サイト
おかもと頭痛めまいクリニック めまいで頭がふらつく(ふわふわ)する原因と対処法